統合失調症と向き合い、それを通じて成長していく姿には深く感動しました。まさに名作と呼ぶに相応しい映画です。
『ビューティフルマインド』は2001年のアメリカ映画であり、アカデミー賞を受賞した作品です。
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【🎦ビューティフルマインド】
【あらすじ】
ラッセル・クロウが演じる天才数学者ジョン・ナッシュの半生が描かれています。ジョンの幸せな結婚生活は短く、突如として幻覚と幻聴が彼を襲います。現実と幻覚の区別がつかなくなった彼は、統合失調症と診断されます。
【統合失調症の症状と印象深いシーン】
以下の部分には映画のネタバレを含むのでご注意ください。
精神薬の服用を怠り、危うく赤ちゃんの命を危険にさらす
ジョン・ナッシュは統合失調症の症状に悩まされ、自分の生活が以前とは異なることに苦しみます。
妻のアリシアからの誘いを断ると、ジョンは薬の服用を中止し、症状が再燃します。
幻覚に支配され、赤ちゃんを浴槽に入れてしまいます。
アリシアは赤ちゃんを間一髪で救い出し、ジョンが勝手に薬を中止したことの危険性を痛感します。
ベッドに拘束されて電気ショック療法を受ける
精神病院でのジョンのシーンは強烈です。四肢をベッドに拘束され、電極を前頭葉にあてられて電気ショック療法を受けます。
その光景を見たアリシアは、愛する夫が苦しむ姿を見ることができず、辛い思いをします。
電気ショック療法(ECT)は現在では改良され、筋弛緩剤を用いてけいれんを抑える無けいれんECTという治療法が主流となっています。
特にうつ病に対しては効果が高いと言われています。
「ここは危ないから早く逃げろ」という幻覚に振り回される
幻覚に支配されたジョンは、妻に対して「ここは狙われているから早く逃げろ」と危機を訴えます。
彼自身は本当に危険を感じており、その思いを伝えていましたが、周囲の人々は混乱を招く結果となりました。
統合失調症と共に生活する家族は、常に不安と緊張の中にいます。
現代の医療技術が進歩し、薬により症状が和らいだとはいえ、統合失調症という病気が持つ恐怖は根深いものがあります。
天才数学者ジョン・ナッシュは、社交的なスキルに欠けていた
ジョン・ナッシュは、他人とのコミュニケーションが得意ではありませんでした。コミュニケーションの困難さが原因で、大学内の人々から馬鹿にされ、良好な人間関係を築けませんでした。
バーで女性を口説くシーンでは、突如として「体液の交換がしたい」と発言し、女性から平手打ちを喰らってしまいました。
精神薬の服用を勝手に中断してはいけない
精神病院から退院したジョン・ナッシュは、体型が太っていました。精神薬は、種類により体重増加といった副作用があることが知られています。
非定型抗精神病薬のオランザピン、クエチアピン、リスペリドンなどは体重増加という副作用がありますが、医者の許可なしに勝手に服薬を中断してはいけません。
統合失調症による筋肉の萎縮と体重の増加
薬物により食欲が増し、思考が鈍化し、興味や関心が低下して行動力が落ちます。
活動量が低下し、運動を行わなくなると、筋肉が萎縮し、筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。
筋肉量が減少すると脂肪が蓄積し、体重が増加します。
幻聴・幻覚はいつまで続くのか?
ジョン・ナッシュは20代で統合失調症を発症しましたが、映画の終盤、老年期でも幻覚・幻聴が続いていました。本人も「幻覚・幻聴は一生消えない」と語っています。
しかし、年齢を重ねるにつれて、彼は幻覚・幻聴への対応が上手くなりました。
・基本的に幻聴・幻覚を無視する
・他者に幻覚・幻聴があるかを確認する
・幻覚・幻聴をジョークに利用し、笑いに変える
幻覚・幻聴があるとしても、彼は余生を穏やかに過ごすことができました
統合失調症には「完治」というものはなく、病状が安定する「緩解」を目指すことが大切です。
病気の根源は自分の内部に存在します。
その根源が再び問題を引き起こさないように、規則正しい生活を送り、ストレスを抱えないことが、病状を安定させる秘訣です。
周囲に幻覚・幻聴を訴えても理解されませんが、それらが自分だけが感じるものであること、それが病気のせいであることを理解することが大切な一歩です。
ジョンの見ている幻覚は、彼が老年になってもその姿を変えていませんでした。
幼い女性の幻覚も変わらずに存在していました。
「夢と現実を区別するのは頭ではなく心かもしれない」と、ジョンが妻に抱きしめられるシーンで語ります。
人は、理屈だけではなく、愛や感謝、他者を思う気持ちが人を変えるということを学ぶことができます。
病気は必ずしも治すものではなく、受け入れ、それと共に生きていくことも必要なのかもしれないと考えさせられます。
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【🎦ビューティフルマインド】
「ビューティフルマインド」についての感想
ビューティフルマインドは、天才数学者ジョン・ナッシュの統合失調症との戦いを描いた、とても感動的な映画でした。
映画はナッシュの脆弱性を隠さずに描き、それを通じて私たちに彼の病気と向き合う姿を優しく描いています。
幻覚や幻聴といった症状に襲われるナッシュの絶望感がとてもリアルに伝わってきました。
特に感動的だったのは、ナッシュが症状に打ち勝つためにどのように対処し成長していったかを描いた部分でした。
例えば、基本的に幻聴や幻覚を無視するようになったり、他者にそれらが現実かどうかを確認するようになったりといった方法を身につけたのは、ナッシュの強さと知恵を象徴しています。
また、映画の中で語られる「夢と現実を区別するのは頭じゃなく心かもしれない」という言葉には、深い意味が含まれていました。
これは、人間が直面する困難に対する態度や思考が、その人の未来を大きく左右するということを示していると感じました。
この言葉は、統合失調症と戦うナッシュだけでなく、人間が持つ様々な問題に対する普遍的な洞察を与えてくれます。
映画が統合失調症という重いテーマを扱いながらも、その中に希望と愛、そして理解の大切さを教えてくれるところに感銘を受けました。
統合失調症という病気に対する理解を深めるための重要な作品であるとともに、人間の心の中にある強さと可能性を描いた名作だと思います。